Ai Nikkor 105mm F1.8S それは魅惑の中望遠


某フリマアプリで偶然見つけたニコンのオールドレンズAi Nikkor 105mm F1.8S
いつも下手なこども写真しか撮れずにワイフに文句を言われている私が、まさかのマニュアルレンズに手を出し、素人レビューをしてみます。


 Ai Nikkor 105mm F1.8S

メルカリでの出会い

メルカリでなんとなくレンズカテゴリをパラパラと閲覧していたところ、Ai Nikkor 105mm F1.8Sというレンズが目に留まった。

 AI Nikkor 105mm F1.8S

中望遠で開放f1.8という明るさは非常に魅力的。
最近ニコンから105mm F1.4というレンズが発売されたが、常用域でない焦点距離のレンズに20万円以上の投資はさすがにできない。
しかし、このレンズはわずか2万円という価格で売られており、外見は傷だらけだが、光学系はまったく問題が無いという商品説明を目にし、悩む間もなく購入をした。

レンズスペック

いままでまったく存在を知らなかったレンズだが、以下のスペック

発売:1981年9月
価格:87,000円
絞り羽根枚数:9枚
最短撮影距離:1m
質量:580g
最大径×長さ:78.5×80.5 mm
フィルタ径:62mm

ファーストインプレッション

すでに35年以上が経過しており、いわゆるオールドレンズの類。
非球面レンズもEDレンズも使われておらず、今のデジタルで使うには収差等が心配。
サイズ的にはAF-S NIKKOR 24-85mm f/3.5-4.5G ED VRに近いが、金属鏡胴のせいかずっしりと重い。
フードは本体組込み式になっており、引き出して使う仕組みだが、短いため逆光では盛大なフレアが発生する。
いろいろ調べたところ、Ai AF Micro Nikkor 200mm f/4D IF-ED用のフードHN-30の流用が可能で、ケラれも発生しない。光線状態によってはHN-30を使用することにした。

D610に装着

届いたレンズを早速D610に取り付けてみる。
油でも付いているのではと思うほど、ヌルっとマウントされる。
少し渋いレンズは経験があるが、径が一回り小さいのではと思うほどに摩擦がゆるい。

ヘリコイドには適度な重さがあり、フォーカシングは苦にならない。
絞りリングは開放の次のf2にカチっと止まらず、ボディー側がf2をf2.8と認識したり、その逆であったり、経年によるヘタりが感じられる。

ファインダーを覗き込むと、105mmという画角で開放f1.8の明るさにハッとする。
この世界は光に満ち溢れている。

Ai Nikkor 105mm F1.8Sを試写

街角スナップ

AI Nikkor 105mm F1.8S

開放でアンダー目に被写体を捉える。
最近のレンズのように開放からカリカリに解像するというような事はない。
かといって緩くて使えないということもなく、幾分線が太く感じられるが、かなり味のある描画ではないかと思う。

続いて、絞り込んで夕日の差すアパートを切り取る。
AI Nikkor 105mm F1.8S

前面斜めから差し込む硬い光が強いコントラストを生み、四隅まで破綻の無いビシッとした絵を記録できた。

F8まで絞込み、明暗差のある被写体を
AI Nikkor 105mm F1.8S
 明部も暗部も破綻無く豊かな快調を表現できた。

前ボケを生かして桜を開放で。
AI Nikkor 105mm F1.8S
アンダーな被写体では気にならなかった緩さも、ハイキーな撮り方では非常に目立つ。
まあこれも味か。


やはり少しアンダーな写真のほうが、このレンズにはしっくりくるようだ。



人を撮る

105mmというのはポートレートに向いた画角。
f1.8という薄い被写界深度を活かして中盤並みの浮遊感を出してみたいとこだが、手持ちでピントを追い込むのはかなり厳しい。
少しでもピントを外すと、目や鼻に壮大な軸上色収差が発生する。
仮にレンズ補正で修正ができたとしても、そもそも開放で芯が出ないレンズなので、アウトフォーカス部はボケボケで使えたものではない。

手持ちでバストアップを開放で。ピントはやはりファインダーでは厳しい。
AI Nikkor 105mm F1.8S
圧倒的に緩いが、曇天下の淡い光ではソフトフィルターをかけたようにも見え、これはこれで悪くない。

カメラを三脚に載せ、ライブビューでピントを追い込み、ようやくほぼジャスピンに。
AI Nikkor 105mm F1.8S
雰囲気は悪くないが、背景のボケがごちゃごちゃして煩い。

F2.8の作例
AI Nikkor 105mm F1.8S
F2.8ではまだまだ緩さは消えず。
拡大して見なければピントが甘い意外は大きな粗も見られず抜けの良い描画となるが、絞った分だけ被写界深度による立体感は乏しい。

ある程度絞って単純な背景で人を撮る。
AI Nikkor 105mm F1.8S
 F5.6まで絞り込むと、全域でキレキレになる。
逆光によるフレアさえなければ現代のレンズとも遜色の無い写りに。

まとめ

このレンズを使い込んで分かったのは、一番シャープな絵を得るためにはF4まで絞ること、F8より絞り込むと回折でシャープネスは低下する。
四隅の解像もF4で最もシャープとなる。

パープルフリンジはF4まで絞っても、明暗差の激しい箇所には少なからず見られる。
開放では後処理で修正が不可能なほど盛大に発生するが、f2.8なら修正が効くレベルまで減少する。

まともな絵を期待するならF4まで絞ることが条件となる。
そうなると、開放からはるかに優れた絵を出すAF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VRを使えば?という疑問が沸いてくる。
f1.8のボケを期待しながらその絞り値が使い物にならないのでは尚更である。

しかし、これはこれとして、緩い絵や収差を味だと思えば十分に面白いレンズといえる。

このレンズを手に入れて1年になるが、その間にJAPAN PHOTOコンテストに佳作と入選、よみうり写真大賞に入選と、3回も入賞をしていることを考えれば、写真はレンズでもカメラでもない。
いや、むしろこのレンズだからこそ良い写真が撮れた?


でもマニュアルレンズは本気で疲れるので、ワシは早く宝くじを当ててAF-S NIKKOR 105mm f/1.4E EDが欲しいのである。



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